蓮の教え-夏の朝
in Hilton Tokyo Shop / written by Nodoka Kujirai
7月の終わり、休日のある日。博物館に出かけるついでに、私は少し早起きをして、ある場所を訪れました。それは、上野恩賜公園の不忍池です。到着したのは朝7時頃でしたが、すでに多くの人々が散策していました。この場所に集まる人々のお目当ては、そう、蓮の花です。
蓮の最適な鑑賞時間は朝7時から9時頃と言われており、その花の命はわずか4日間しかありません。1日目は早朝に、つぼみの先が少しだけ開き、数時間後には再び閉じます。2日目は夜明け前から開き始め、最も美しく色濃く大きく開いた後、午後にはまた閉じます。3日目も夜中から開き始め、最大に開いたのち、また閉じ、そして半開きの状態で4日目を迎えます。完全に咲き切った後、午後にはすべて散ってしまう、 とても儚い蓮の花です。この時期、この時間だけに訪れる、特別な楽しみなのです。
上野恩賜公園は、都内でも屈指の蓮の名所です。涼しげな風鈴がたくさん吊るされた「蓮見デッキ」からの眺めは、本当に素晴らしいものでした。
「蓮は泥より出でて泥に染まらず」と言われるように、蓮の葉の表面には、ワックスの結晶に覆われた超微細な突起物があり、水滴をコロコロと弾くほどの高い撥水効果があります(これをロータス効果といいます)。沼地に根を張り、きれいな水よりもむしろ泥水から養分を吸い、高貴な花を咲かせる蓮。その様子から、お釈迦様は「泥(困難や悲しみ)があるからこそ、そこから立ち上がったあとには清らかな大輪の花(人生)が咲くのだ」と説いたといいます。
「極楽浄土に咲く最上の花」として、蓮は仏教と非常に深い関わりを持つ花です。地域によって異なるかもしれませんが、蓮の葉はお供え物や提灯の火を消す際の水皿として使われたり、お盆の飾り付けのモチーフになったりします。この時期に蓮を目にされた方も多いのではないでしょうか。
蓮の花言葉は「神聖」「休養」「清らかな心」などです。この休息で英気を養い、蓮の花のように背筋をピンと伸ばして、多くの学びを得て、さらに良いものを提供していきたい。そんな思いを抱いた夏の朝でした。
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