花は実に不思議な存在です。
衣食住の要素として人が生きる上で絶対に不可欠なものというわけではなく、装飾と考えるのであればその美しさをいつまでも留めておけるものではありません。ただ確実なこととして、花を見て、あるいは贈られて嫌気を感じる方はあまりいらっしゃらないのではないか、ということ。万人が持つ、花は儚く・美しく・愛おしいものとする感覚こそが、花が花たる由縁−〈花は心の糧〉と、私が思うところです。


洋花文化が日本に伝えられたのは幕末から明治の頃。それ以前は庶民間で花を贈るという風習は存在せず、もちろん、花束やフラワーアレンジメントのような装花の形態もありません。その後の近代化とともに日本人の生活にゆとりが生まれ、嗜好品としての花の需要が進展します。こうして生活の中での花の楽しみ方は大きく多様化するのですが、そうした草創からの時系列に弊社の関わりが存在していたことは間違いなく、だからといって老舗を慢心するということではありません。むしろ、物事を切り拓いてきた気概を持ち続けることです。これからの日本の洋花文化をいかに支え発展させていくのか、それを老舗として、始まりから一貫して牽引し続けていくということです。


生産技術や流通機構の進展などで、花卉業界も大きく変容を続けています。国内経済を苦しめたコロナ禍は、嗜好品としての花の需要を大きく縮小させるとの観測もされましたが、ITソリューション等の活用により低額サブスクリプションサービスなどが出現し新たな自宅需要を生み出しました。本来は廃棄される規格外商品を有効活用する動きも、SDGs達成に向けた取り組みとして正しい道筋と言えます。 一方で、eコマースの利便性は顧客とのコミュニケーションを希薄化するものであり、特に感性で選ばれるべき生花の場合は現物を手にとって購入を判断できない点から、利用者の想いとのミスマッチの起こりやすさも指摘されます。競合が多くなり価格競争が激しくなる点も確かに利用者のメリットにはなりますが、品質の維持には課題があります。


私は、これからの弊社の取り組むべき方向を2面でとらえています。
ひとつは、《損なってはならない価値》。
それは、多種高品質な日本洋花の本質的な魅力を伝え広め、利便があっても損なわないサービスを追求し続けるということ。これまで以上にお客様本位の姿勢を明確にすることでより多くの方にご利用いただける老舗花店であることと、洋花文化の更なる浸透を目指していくものです。
もうひとつは、《創出すべき未来》。
良いものを良いと言い続けるだけの活動では、ニーズの奔流に十分な影響を及ぼすものではありません。だからこそ、優れた花材にゴトウブランドとしての斬新さを加え、洋花文化発展の牽引者となることも目指していかなければならないと考えます。斬新さとは文字通り、これまでの花屋の概念を超えるものなのかもしれませんが、そうしたビジョンの具現化に向けた取り組みは、すでに私どもの中で始動しています。


生活を豊かにする花《心の糧》の提供こそが、我が使命 —


私どもは創業精神を再認識するとともに、業務の深化と進化の2面での活動を推進して参ります。皆様の日常とこれからの豊かさに貢献する日本の新しい洋花文化形成を目指し、ネクストステージを意識したチャレンジを続けていく所存です。


株式会社ゴトウ花店
代表取締役社長
後藤 尚太郎

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