凛
Shinjuku Takashimaya Shop / written by Nanae Fukawa
行楽の秋。晴れた休日、秩父までのドライブ。東京から約2時間の道のり。山々に囲まれ、くねくねと続く峠道を進むと今回のお目当てのひとつ、両神山麓花の里ダリア園へ到着です。
秩父郡小鹿野町にあるこのダリア園は広さ10,000㎡。約350種のダリアが約5,000株植えられています。開園期間の9/1から11/3まで。秋風を感じられる今はまさに見頃なのではないでしょうか。
傾斜する山の斜面には、さまざまなダリアが植えられており、その美しい色彩は青空に映えています。一株の直径は約1mほどで、最も背の高いものでは1.8mもあり、壮観さに圧倒されます。また、ダリアは種類によって色、咲き方、大きさが異なり、デコラティブ咲き、ポンポン咲き、カクタス咲き、シングル咲きなど、多彩なバリエーションも魅力です。
ダリアが日本に持ち込まれたのは19世紀半ば。オランダから長崎に持ち込まれ、当時は天竺牡丹と呼ばれていました。その後イギリスからの塊根輸入を経て、新しい品種の育成が進みました。昭和時代は庭園での需要が高まり、切り花としての普及はまだ進んでなかったそうです。
通常、花屋に並ぶ切り花とは異なり、地植えされたダリアは自然の中で咲いており、その新鮮さに触れながら楽しむことができます。たくさんの蝶や、蜂が飛び回り蜜を採る姿が見られ、花びらに触れれば新鮮な感触が手に広がります。花びらにつく朝露も、その花の生命力を象徴しています。散策しながら、特定の品種に心を奪われたり、その大きさに感心したり、自身の好みを見つけたりしました。カメラが趣味のおじさまにいい写真を取るレクチャ-を受けたり、ご自慢の写真を見せてもらったりと、自然の中でダリアを満喫しました。
私がゴトウフローリストに入社したのは数十年前で、六本木本店での新たなキャリアがスタートでした。店内はクリスマスの装飾が施され、キラキラとしたオーナメントとイルミネーションで華やかに飾られていました。初めての環境での不安と同時に、フローリストとしてのスタートを切ることができた事に喜びを感じていました。
当時、ゴトウフローリストで見る花や葉は見たこともないものばかりで、中でも「黒蝶」というダリアの品種が忘れられない存在となりました。花びらはしっとりとしたベルベットのようで、中心に向かって花びらは重なり、深い赤から黒へと変わっていく様子が印象的でした。 店内のカラフルな装飾との対比が、この黒蝶の深い色を一層引き立て、その美しさと、凛とした佇まいに魅了されました。この瞬間の記憶は今も鮮明に残っており、ダリアの黒蝶は私にとって特別な花。この花を手に取ると、心が引き締まる感覚が蘇ります。初心と凛とした強さが再び湧き上がり、私の中で大切な存在となっています。
花を通して過去の経験や思い出を振り返ることは、特別な経験です。お客様にとっても花を通じて新たな出逢いや感動があることを願っております。その出会いは何度もふとした瞬間に訪れることがあるように感じます。
◎ ゴトウフローリストでは、その特別な瞬間がお客様に訪れるよう、感動に満ちた場を演出しています。季節の美しい花々でお客様をお迎えいたします。
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