蘭の調べ-秘められた舞台裏-<br><font size="-2">in Roppongi Shop / written by Kumi Kishimoto

蘭にも季節があり、その魅力は四季を通じて楽しむことができます。胡蝶蘭のような通年愛されている品種から、夏に涼しげな蘭まで、様々な種類が私たちの心を惹きつけます。

そして、一年を通して最も多様な蘭が冬から春にかけて花盛りを迎えます。
今回の舞台に登場するのは、世界四大洋ランの一つであり、その存在感はまさに特筆すべきものです。その名は「パフィオペディラム」。その風格ある花弁と独特の形状によって、まるで芸術品のような美しさを放っています。この花たちが織りなす舞台裏に触れることで、私たちは蘭の神秘的で儚い美しさを感じ、四季折々の変化に心を奪われます。パフィオペディラムという名だけでなく、その背後に広がる物語に注目してみました。

港区 六本木 花屋 ゴトウフローリスト パフィオベディラム

ゴトウフローリストでの勤務を通じて、様々な蘭との出会いが私にとって宝物に。特に、鉢物の担当になったことがきっかけで、毎年開催される「世界らん展」に足を運ぶようになり、そこで見つける蘭たちの、個性的で愛らしい存在感に魅了されていきました。

「パフィオペディルム」その名前は、ギリシャ語のパフィア(ヴィーナス)愛と美の女神とペデュロン(スリッパ)の2語からなり、「ヴィーナスのスリッパ」という意味で、花びらの一部が袋状でスリッパに似ていることから由来してます。英名では「レディースリッパ」と呼ばれ、袋状のリップの部分が特徴で、食虫植物にも思えるユニークな容姿は、今にも歌い出しそうな楽しげな表情をしているようにも見えます。
この大きく袋状に変化したリップ(唇弁)はポーチと呼ばれ、重要な役割を果たしています。訪花昆虫(ポリネーター)がポーチの中に入り、花粉を体につけます。内側には細かい毛があり滑りにくくなっており、縁に返しがついていたりと、一度訪れたポリネーターに確実に受粉を手伝ってもらえるような、驚く構造になっています。
原産地はニューギニア、スマトラ辺りの熱帯圏、タイ、インド北部の亜熱帯圏で、ほとんどの種類は直接地面に根を張っており、中には石灰石土壌を好んで自生するものもあり、ラン科に典型的なずい柱が見られず、仮雄ずいが発達して多くのポリネーターをおびき寄せます。
その独自の生態と共に、パフィオペディルムが持つ個性的で美しい姿勢は、蘭愛好家たちにとって特に高い人気を誇り、その袋の役割や生態学的特性が、観賞する者に深い感銘を与えています。花が持つ美しさだけでなく、自然との共生や進化においても注目すべき存在です。

港区 六本木 花屋 ゴトウフローリスト パフィオベディラム
港区 六本木 花屋 ゴトウフローリスト パフィオベディラム

そして、多くのパフィオペディルムは春に出回りますが、夏から秋にかけてもさまざまな品種が楽しめます。グリーン、ブラウン、白、ピンクなど、また筋の入った模様があるなど、全体として渋みが強く、袋状になってる唇弁には艶があり、1本から数輪並んで咲くなど、多種多様な存在が私たちの目を楽しませてくれます。

 

◎ゴトウフローリストでは、季節限定でパフィオペディラムを使った蘭の寄せ植えも販売しております。
一味違った印象に残るギフトです。
個性豊かな花々と共に、皆様のご来店をお待ちしております。